はじめて緑内障と出会ったのは、確か40代の半ばのことだった。
それまでも健康診断で目の検査にたびたび引っかかっていたけれど、特に緑内障と言われることもなく過ぎていた。
ある日、会社で目の前に指を出してみたとき、指の一部分が見えないことに気がついた。私はどこかのんきなところがあって、それが視野の欠損だなんて全く思わず、「何か面白いことになってるなあ」と思って、時々目の前に指を持っていっては距離を縮めたり伸ばしたりして、見え方を確認していた。指が途中で消えるのが不思議で、むしろちょっと楽しんでいたくらいだ。
ある時、同僚に「ねえ、見て。こうやって指を目の前にすると見えないところがあるの」と、悪びれもせず見せたところ、同僚はびっくりして「それ、怖くない?」と言った。その声が本当に心配していた声だったので、さすがに「あ、やばいかな」と自覚した。情けない話だけれど、その後ほどなくして病院に行った。
駅の近くで会社帰りでも寄れるクリニックに初診で行ったところ、緑内障と診断された。おそらくそれほど進行はしていなかったはずなのに、すでに中央に近い部分が欠損していたことがその時初めてわかった。
パンフレットを渡されて「失明原因の第一位」という文字を見たとき、つい最近まで「面白いなあ」とのんきに構えていた自分が、なんて馬鹿だったんだろうと後悔しても足りない気持ちになった。そして突然「失明」という現実が自分の身に降りかかるかもしれないと知って、本当に見えなくなったらどうしようと、馬鹿みたいに目をつぶって家の中を歩いてみたり、あれこれ考えては不安になっていた。お風呂も入れるのかな、街なんか歩けないよ、と。
ネットで調べまくったり、本を読んでみたりしたけれど、当時は今ほどお医者さんが直接YouTubeで発信することもなく、あまりよい情報は得られなかった。言われた通り目薬を使って通院を続けたが、緑内障はどうも進行していったらしい。
そればかりか、私のまつげがぐんぐん伸びてきた。デザイナーの友人に会ったとき「あれ、なんか最近かわいくなったね」と言われてびっくりした。そういえば先生が「まつげが伸びる副作用がある」とおっしゃっていたなと思い出したけれど、もうそんなことはどうでもいいのに、という暗い気持ちで「えー、そんなことないと思うよ」と後ろ向きに返してしまった。
1年半ほどそのクリニックに通ったけれど、なんとなく見えない範囲が増えてきたような気がして不安を募らせていた頃、会社の同僚に「緑内障は専門医じゃないとダメだよ」と専門医を紹介してもらった。
早速専門医のところへ行くと、丁寧にいろいろと調べてくれた。そして、私が通っていた駅前のクリニックでは、今ではあまり効果がないとされているお薬を1年半もずっと差し続けていたことがわかった。その間に少し進行してしまったことは否めないけれど、専門医の先生は「大丈夫だからね」と優しく言ってくださって、私に合うお薬をそれから半年かけて丁寧に選んでくださった。
そんなわけで、緑内障患者として1年半も無駄に過ごしてしまったけれど、ここからが本当のスタートだと思って、先生を信頼してしっかり治療しようと前向きな気持ちになれた。
今、私は58歳。
猫2匹と、小さなオープンガレージにバラの鉢をたくさん並べて、1人で暮らしている。なるべくパソコンは見すぎないようにしたいけれど、もともとパソコンが好きなので、最近はAIもたくさん使って目の負担を減らしながら、やりたいことはやろうという気持ちで、なんとなくふんわり楽しく暮らしている。
緑内障のことは、同じ病気の人と不安を共有したり、情報交換できたらうれしいと思って、思い切って発信することにした。それだけだと少し重くなるかなと思うので、日々のたわいない生活も交えながらお伝えできればと思っている。少しでも共感してもらえたり、何かのお役に立てたらとてもうれしい。

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